AI、EXILE THE SECOND、YOASOBIといった数々のアーティストのレコーディングやライブサポートで活躍中のギタリスト、AssHさん。今回、そんなAssHさんに「音楽・ギターとの出会い」、「初めてのマルチエフェクターZOOM G2.1Nuについて」「YOASOBIでの活動秘話」など、とても興味深いエピソードを取材することができました。また、インタビュー後半では事前に試奏して頂いたZOOM『MS-200D+』『MS-70CDR+』のレビューもご紹介(動画付き)。YOASOBIファンはもちろん、全ギタリスト必見のインタビューです。

音楽・ギターとの出会い

──音楽やギターを始めるきっかけから教えて頂けますか。

実は幼少期の頃からKISSだったり、ツェッペリン、プリンス、ヴァンヘイレンなどのギターの入った音楽が家でよく流れていたんです。

──日常的にギターの入った音楽を聴く環境だったのですね。

そうですね。ただギターを始めたのは17歳の時で、最初は比較的安価なモデルから始めて、ちょうど1年くらい経った時にギブソンの335の90年代製のを買ったんです。それから色んな人にペダルや音楽を教えてもらって、2年後の19ぐらいの時にはブルースセッションのハウスバンドに入って、少しずつ仕事として意識していくようになりました。

──17歳で始めて19歳でハウスバンドとはすごいですね。

今思えば、ギターもベースも大先輩で上手い人が周りにいたので、「あ、こういう音を出していると喜ぶ」「こういう音を出している人が稼いでいる」みたいな正解を知るのが早かったんだと思います。なので、環境にはすごく感謝していますね。

AssH

──その頃はどんなアーティストから影響を受けたり、練習をしていたのでしょうか。

高校で軽音楽部に入っていた時なんかはマキシマムザホルモンとか大好きで聴いていました。ただ、その頃から練習って概念はなくて、好きで触っていたら今があるというか。その感覚はずっと同じです。で、ある時にAki's Guitar Shopのアキさん(AssHのギターも製作)に都内の楽器屋さんで出会って、彼の影響でサンタナとかツェッペリン、ラリー・カールトン、ジョン・メイヤーみたいなアーティストに触れて、こんなにギターをかっこよくフィーチャーしてるジャンルとか音楽があるんだって知ったんです。そして「あ、そういえば幼少期によく聴かされてたな」というのを思い出して。

──そこでちょうど合致するんですね。

はい。それから邦楽のロックバンドや洋楽にのめり込んで、さらに1930年ぐらいのロバートジョンソンとかジョンリーフッカーとかブルースに行って「ギター1本でかっこいい演奏をする」っていうようなところに憧れていきました。ギターを始めて1年後ぐらいにはもう洋楽にシフトチェンジした感じです。

AssH

──では、AssHさんにとってエフェクターとの出会いというのは?

高校生の時に、知り合いに「マルチエフェクターっていう全部入って便利なのがあるよ」って教えてもらって。それで自分で手に入れたのがZOOMの『G2.1Nu』だったんです。最初わからないからプリセットを触って遊んでいたんですが、とにかくエフェクターというものを知らない年頃には作りえないようなサウンドのプリセットがいくつも入っていて。 僕個人としてはこの 『G2.1Nu』でひと通り勉強させてもらいましたね。

──AssHさんのYouTubeチャンネルでも取り上げて頂いたようですね。

そうなんです。この間、『G2.1Nu』のプリセットエフェクトを振り返る企画動画をやらせてもらいました。プリセットにギタリストの名前や曲名みたいなヒントがいっぱい隠れているじゃないですか、そういったものを回収して10年経って改めて答え合わせをした感じでとても楽しかったですね。

YOASOBIでの活動について

──AssHさんと言えば、現在はYOASOBIのギタリストとしても有名かと思いますが、そもそもどんなきっかけでYOASABIに参加することになったのですか?

僕は高校・大学時代はネットでいろんな人に出会ってバンドを組んで活動したり、自分で曲を作ったりしていて、20歳の時にエイベックスさんからスカウトを受けビジネス音楽の世界にも飛び込みました。エイベックスさんを辞めた後はハイエースで全国をまわったり結構土臭いバンド活動に励んだ時期もあったし、Aki's Guitar Shopのアキさんに5年ぶりに再会して、「アメリカ行きなさいよ」と勧められたのをきっかけにお金を貯めてロスに飛んで、色んな音楽カルチャーに触れる経験なんかもしたんです。で、本当にいろんな経験を積んだ後、ソロ活動でシングルをリリースして今のAssHとしての名前を確立したんですが、そのソロ活動を始めた時期にまたバンド活動もしていて、またハイエースでまわっていた時違うバンドで歌っていたのがAyaseだったんです。

──その時のバンド活動がYOASOBIの活動につながる?

すぐにではなかったんですが、しばらくしてから急に連絡がきて、その時は名前も出会った頃と違っていたので、最初は「誰だろう?」みたいな感じだったんですが、後からわかって電話してみたら「YOASOBIのサポートミュージシャンを探していて、ギター誰かいい人いないかな?と思って浮かんできたのがAssH君だったので」って言われて。僕も二つ返事でやるよって言って、今に至ります。

AssH

──YOASOBIって電子音が多いイメージですが、AssHさんとしてはどのような印象を?

もちろん最初悩むわけですよ。「これってギターいるの?」って…。現にギターが入ってない楽曲も中にはもちろんあって。それが一番大変。ギターが主張し過ぎないで、存在感だけ欲しいとか、そういった難しさは感じました。でもそれって別にギターが入っている曲でも非常に大事なことなので、やりながら勉強にもなったと思います。あとは、言われたことをやるだけじゃなくて、自分からもアイディアを出してAyaseとすり合わせて曲をつくっていきました。

──AssHさんからもどんどんアイディアを出していくんですね。

そうですね、「群青」なんかはレコーディングでは誰でも弾けるぐらいシンプルなコードを入れていますが、実はライブになると結構難しくしてあるんです。合わせて練習する中でそういうアイディアを入れ込んでいったりしています。

──レコーディングはどのような感じで進められるのですか?

「今日の午前5時ぐらいに終わるから明日行ける」みたいな感じでAyaseから誘われて、事前にデモも聞かずに集まって、リハーサルして、みたいな作り方する日もありました。あと、僕もともとガット弾きじゃないんですが「三原色」という曲だとガットを弾いていて、あれは制作の当日、デモを耳コピしながら一気に録ったんです。なので、結構その場で対応してレコーディングするみたいな、冷や汗をかくような収録もやっていますね(笑)

ソロ活動について

──AssHさんはYOASOBIでの活動とは別に、自身のソロ名義でも活動されていますよね。その棲み分けはどのようにされているのでしょうか。

ありがたいことにYOASOBI、AIちゃん、EXILETHESECONDなど、様々なアーティストさんのバックで弾く機会も多いんですが、実を言うと僕自身はスタジオミュージシャンをメインで活動したいわけではないんです。やっぱり一番はソロで、自分の恩恵を受けた音楽カルチャーっていうものを自分というフィルターを通して投影していきたい。だから思いついたアイデアを即座に発表できるっていうのがAssHだなって思っているんです。

AssH

──”AssH”で自身の経験を音にしていくのですね。

はい。一番はリッチー・コッツェンみたいな活動が理想ですね。有名なギタリストなんだけどジャスティンビーバーとかエドシーランみたいな売れ方とはまた違っていて、家族と一緒にツアー回っている雰囲気が僕はすごく好きで、いいなって思うんです。最近はちょっとAssHの活動は落ち着いていましたが、その分いろんなツアーで経験を積んだので、また今月発表(2024年4月)する曲を皮切りにソロ活動も頑張っていこうかなと思っています。

ギターサウンドに求めるもの

──究極的にはAssHさんはギターサウンドに何を求めていますか。

非常にシンプルで「やばい、かっこいい、すげえ」これだけです。人を感動させる、人の人生に影響を与える、感情を動かす、そういうギターを弾きたいなというのがありますね。

ZOOM MS-200D+

──なるほど、今日は弊社で新しいエフェクターの『MS-200D+』と『MS-70CDR+』を試奏して頂きましたが、弾いてみていかがでしたか?

まず『MS-200D+』はスイッチ部分など、前機種からの改善点も良いですし、何より歪みが200種類も入って全部がモデリングってわけじゃないのがすごい。モデリングが大半を占めて、そこからキャプチャできるっていうのが今の時代の流れだと思うんですけど、そうじゃないところに驚きました。実際に鳴らしてみるとZOOMらしさが軸としてありつつ、アナログ的な音もあって面白かったです。

──動画では実際にいくつか音色をピックアップして弾いていただきましたね。

こういうペダルって「アイディアをくれる」というのが大事だと思っているんです。たまに普段使っているペダルを禁じてボードを作ろうとか、それでツアーを回ってみようとかっていうのをやるんですけど、『MS-200D+』を弾いたら本当に幅広く使える音が多かったです。200種類あればもちろん使えないなって音もあると思う。でもこれ使えるなって音もそれ以上にあるから、使っていてとても刺激を受けるんですよね。

AssH

──ありがとうございます。では、『MS-70CDR+』の方はいかがでしたでしょうか。

まず、このサイズ感で空間系を網羅できるというのは、それだけでも嬉しいというギタリストがいっぱいいると思います。ステレオ出力ができるのも今の時代に合っていますし。あと、これ通じるかわからないですけど、やっぱりZOOMらしいんですよ。例えば、プリセットにアナログっぽいスプリングが入っているんですが、ZOOMの解釈したスプリングリバーブ、テープディレイ、モジュレーションがあって、ZOOMを長く愛している人にとっても嬉しい機種になっていますよね。今日僕も色んなプリセット試してみましたが、ボードに組み込んでライブで使ってもいいし、曲作りで登場することもあるだろうし。使い勝手が良くて、幅広いアイディアにつながっていくなと実感しました。

──ありがとうございます。嬉しい言葉です!

ZOOM MS-70CDR+

ギターのプロを目指している方へのメッセージ

ギターが上手い人って、今の時代SNSなどでどんどん見つかるけど、ミュージシャンを目指すなら「シグネイチャートーンがあるか」が重要だと僕は思っています。絶対これザックワイルドじゃん、ゲイリー・ムーアじゃんとか、積み上げてきているものがあるギターのサウンド。それは絶対必要ですよね。

自分のサウンドというのを見つけるのにも、歪みが200個もあったり、空間系を網羅しているZOOMのマルチストンプは手助けになるペダルだと思います。

ドレミファソラシドって8個しかサウンドがない中で表現する。でも曲作りって数千万曲あるじゃないですか。その中でオリジナリティだったりとか、その人じゃなきゃいけない何かがあるはずなんですよね。だからシグネチャートーンっていうのは、存在感と仕事、生き方に関わってくる大事な要素かなと思います。

AssHギタリスト/作編曲家
AssH

AssH (アッシュ)

ギタリスト 作曲家

17歳の頃よりギターを始め、その後バンド活動においてライブを精力的にこなし、TVCM・様々なアーティストのレコーディングやMV出演など、活動の幅を広げて行く。単身L.Aに渡り、現地のライブやセッション・チャーチに参加。2018年ソロアーティストとしてキャリアをスタート、主要都市でのツアーや韓国でのライブを敢行。現在もソロ活動を主軸に、AI/EXILE/EXILE THE SECOND/YOASOBI/Cyber Japan Danvers/渡辺美里/HEY!SAY!JUMPを初めとする数々のアーティストのライブ・レコーディングサポートに加え、自身のYouTubeチャンネルやオンラインサロン、また多くのギター関連のメーカーのレビュー動画や雑誌などにもに多数出演。そして自身初のシグネチャーエフェクター発売やストラップや靴を初めとするアパレルメーカーとのコラボも展開。YouTube関連動画総再生数は6億回を越える。

AssH公式YouTube:AssH(アッシュ)ちゃんねる

AssH × ZOOM MS-200D+ / MS-70CDR+

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